東工大数学科2年を終えて
数学科の一年間 - 学部2年
東工大(現東京科学大学)の理学院数学系で学部二年生を過ごしたので、色々振り返ってみたいと思います。 東工大は一年は教養課程となり、専門的なことをほとんど学習しないので、B2の今年が数学科として初めての一年間でした。 (この記事は2025年度の数学系B2の記録です。)
一年の概観
東工大数学系B2では、標準的に次の科目を履修することになっています:
- 解析学概論:微分積分学、ベクトル解析 (1~4Q)
- 応用解析序論:フーリエ解析の基礎 (3~4Q)
- 代数学概論:群論及び環論の基本的な事柄 (1~4Q)
- 線形空間論:ジョルダン標準形、双対空間、双線形形式、テンソル積など (1~2Q)
- 位相空間論:集合論、基本的な位相空間論 (1~4Q)
- 幾何学概論:曲線曲面論 (3~4Q)
上の科目のうち1~4Qで開講されている科目は演習も付随していました。 基本的に講義は出席が必須ではなく、各自で勉強して試験に臨むことも可能な形式でした。 また、上記科目以外にも英語や第二外国語、文系教養科目を履修することが必要とされていました。 僕の場合は、文系教養科目として以下を履修しました。これについても触れたいと思います。 また、単位互換制度を用いて一橋大学でもいくらか履修しました。
- 意思決定論:非協力ゲーム理論の基礎 (1Q)
- 統計学:統計学の基礎、社会統計 (夏季集中講義)
- 科学とヒューマニズム:工学、文学、人文主義の関係など (3Q)
- 応用ゲーム理論:非協力ゲーム理論の様々な話題 (一橋夏学期)
- 経済学入門:経済学の初歩的な内容 (一橋秋学期)
数学系の科目について、既習であるという理由から全般的に講義には出席しませんでした。 かわりに図書館で勉強することが多かったように思います。 演習科目はどれも役立つものが多く、楽しむことができました。 特に、代数学概論の演習は非常に有効でした。
- 総合GPA:4.04 / 4.50 (95.4点)
- 教養GPA:3.95 / 4.50 (94.5点)
- 専門GPA:4.07 / 4.50 (95.7点)
- 一橋GPA:4.00 / 4.00 (100.0点)
GPAなどは上の通りです。東工大は最大が4.5であることに留意してください。 右は100点満点に換算した得点です。基本的に数学をしていればよかったので楽でした。 既習だったのである程度有利に立ち回れたと思いますが、ときどき計算ミスなどで失点してしまいました。
解析学概論
解析学概論では、微分積分学及びベクトル解析を扱いました。 前半では級数の扱いや極限、連続性、微分積分といった基礎的な内容と、多変数関数の微積分を学習しました。 後半はベクトル解析、ポテンシャル論、微分形式などで、結構ハードだった気がします。
成績評価は、いくらかの中間レポート、期末試験、演習の小テスト回答状況、演習の発表状況などで決定されていました。 演習は、最初に小テストを解き、終わった人から黒板発表に取り掛かるような形式でした。
- 解析学概論第一:88
- 解析学概論第二:100
- 解析学概論第三:94
- 解析学概論第四:95
成績はあまり振るいませんでした。 解析学は得意ではありませんが、既習の範囲も多かったので少し残念です。 後半はあまり丁寧に定理の証明を追えなかった自覚はあります。
演習科目の前半では、Ascoli-Arzelaの定理の証明などを行った記憶があります。 一様連続性などについて、しっかりと訓練することができました。 後半では、微分形式について自力で様々な定理を導くことができ、良い練習になりました。 特に、演習としてHodge-star作用素といった諸概念や、ドラームコホモロジーの簡単な例を扱ったりして楽しかったです。 演習の先生は質問にも快く答えてくださり、とても楽しかった記憶があります。
応用解析序論
応用解析序論では、フーリエ解析を扱いました。 前半ではフーリエ級数の収束性と熱伝導方程式について扱い、後半ではフーリエ変換を扱いました。
成績評価は、期末試験一発勝負でした。 計算問題がメインで、高得点を取るのはなかなか難しい印象です。
- 解析学概論第一:90
- 解析学概論第二:89
測度論を仮定せず、フーリエ級数の様々な収束条件を与えていきました。 標準的なものだったと思います。 説明がかなりわかりやすかったです。 Weylの等分布定理や不確定性原理など、おもしろい応用例をたくさん紹介してくださったのでとても楽しかったです。
代数学概論
代数学概論では、環論と群論を扱いました。 前半では環論を中心に基本的な事柄を扱い、後半では群論と表現論の基礎的な事柄を学習しました。
成績評価は、期末試験及び演習の回答状況で決定されました。 演習は、3時間で5~7問の問題を解くテスト形式でした。
- 代数学概論第一:100
- 代数学概論第二:100
- 代数学概論第三:93
- 代数学概論第四:98
この科目の演習が最も有意義で、印象的でした。 その形式からもわかるように、非常にハードでした。 毎回、1問は先生に提出する必要があり、翌週先生が記述をチェックして対面で返却してくださるというかなりありがたい形式でした。 とても細かくチェックしていただき、厳密かつ論理的な答案を書く力が著しく上昇したことを実感します。 また、他の科目と違って、演習の問題はすべてにチャレンジする必要があり、また時間制限も厳しいのでかなり実力が付きました。 正直辛かったですが、最も受講してよかった講義です。 先生の「定義から導けることは自明なことがほとんどだから、定義にこだわらず定理をガンガン使いなさい」という助言は非常に役立っています。
線形空間論
線形空間論では、教養で学習した線形代数の続論を扱いました。 ジョルダン標準形、双対空間、双線形形式、テンソル積を学習しました。
成績評価は、期末試験のみでした。 難易度は標準的でした。
- 線形空間論第一:98
- 線形空間論第二:100
この科目はとにかく講義のスピードが速かったのが印象的です。 半年で上記の内容を扱わなければならないので仕方がないことではあると思います。 講義を聞いて理解することは難しく、自分で復習する必要がありました。 教科書の線形代数の世界もやや難しく、その点でこの講義は過酷だったかもしれません。 しかし、この科目で早い間に線形空間論の知識を習得できることはこのカリキュラムの大きな利点だと思います。
位相空間論
位相空間論では、集合論と位相空間論を扱いました。 基礎的な内容だったと思います。テストも基本的には簡単でした。
成績評価は、期末試験及び演習の小テスト、演習の発表状況で決定されました。 4Qのテストだけは少し難しかったです。
- 位相空間論第一:99
- 位相空間論第二:98
- 位相空間論第三:100
- 位相空間論第四:89
この科目はゆる~い感じで進んでいきました。 演習では、ときどき面白い問題が出題されて楽しむことができました。 従属選択公理など様々な選択公理の問題やザリスキー位相、位相群などの内容があったのは良かったと思います。 楽をして成績を取ることもできますが、純粋に数学を楽しみたいような人にこそ向いていた講義だと思います。
幾何学概論
幾何学概論では、曲線曲面論を扱いました。 前半に曲線論を、後半は曲面論といくらかのトポロジー的な話題を扱いました。 教科書は山田先生、梅原先生の『曲線と曲面』でした。
成績評価は、小テスト及び期末レポートでした。 小テストは、3回受験して、成績の良かった2回を採用するという最もありがたい形式でした。
- 幾何学概論第一:96
- 幾何学概論第二:100
この科目は先生の説明が非常にわかりやすくて良かったです。 だいたい二週間に一回小テストがあるので、頻繁に勉強しなければならずその点で良い形式だと思いました。 レポート問題が程よく難しく、楽しかった記憶があります。 非常に良い授業でした。 個人的な意見ですが、曲線曲面論は多様体への接続をスムーズにするためにもぜひ学んでおきたい科目だと思います。
教養科目
教養科目では、様々なことを学びました。 意思決定論、応用ゲーム理論はゲーム理論的な内容で、統計学は推測統計、記述統計を扱いました。 科学とヒューマニズムでは、宮沢賢治をはじめとする様々な文学に触れながら人文主義的な思想と向き合いました。 経済学入門は経済学の3分野すべての入門を扱いました。
成績評価は上の3つはレポート、下の2つはテストでした。
- 意思決定論B:100
- 統計学B:100
- 教養特論:科学とヒューマニズム:100
- 応用ゲーム理論:A
- 経済学入門:A
意思決定論、応用ゲーム理論はほとんど数学のような内容だったので楽しめました。 趣味で協力ゲーム理論を勉強していますが、講義では非協力ゲーム理論を扱ったので新鮮でした。 統計学は、実社会への応用を見据えた講義でかなり楽しかったです。 経済学入門は、正直、苦痛でした。どうも経済学が肌に合いません...。
科学とヒューマニズムは本当に楽しかったです。 英語開講だったのでついていけるか不安でしたが、なんとか練習していた英語力で事足りました。 ただし、聖書などの教養の面ですこしギャップを感じました。 長めのエッセイを2回書く必要があり、ただでさえ人文系の内容を書くのが大変だったのに英語で書く必要があって苦労しました。 しかし、先生はよく質問にも答えてくださり、とてもわかりやすく講義してくださったので大変満足です。 良い講義でした。また履修したいです。