特定の条件を満たす有理数についてのテクニック
競技数学 - 初等整数論
今日は、整数問題で使えるちょっとしたテクニックを紹介します。 整数係数多項式の有理根に関する定理を使います。
問題
$a,b,c \in \mathbb{Q}$ に対して、次を示せ: $$a+b+c,ab+bc+ca,abc \in \mathbb{Z} \implies a,b,c \in \mathbb{Z}$$
$a,b,c \in \mathbb{Q}$ に対して、次を示せ: $$abc+a,abc+b,abc+c \in \mathbb{Z} \implies a,b,c \in \mathbb{Z}$$
$a,b,c \in \mathbb{Q}$ に対して、次を示せ: $$abc,a^2+2bc,b^2+2ca,c^2+2ab \in \mathbb{Z} \implies a,b,c \in \mathbb{Z}$$
解説
前提知識として、以下の定理を導入します。
$n$ 次の整数係数多項式 $P(x)$ を $P(x) = a_nx^n + \cdots + a_1x + a_0$ とする。 このとき、$P(x) = 0$ の有理数解を互いに素なる $p \in \mathbb{N}, q \in \mathbb{Z}$ を用いて $\frac{q}{p}$ とおけば、 $p$ は $a_n$ の約数、$q$ は $a_0$ の約数となる。
特に、モニックな多項式、すなわち $a_n = 1$ であるような多項式の有理根は整数となります。
$P(\frac{q}{p}) = 0$ の両辺に $p^n$ を掛ければ、$p \mid a_nq^n$ がわかるから、$p,q$ が互いに素である事実と併せて、$p \mid a_n$ を得る。 また、定数項に着目すれば、同様に $q \mid a_0$ もわかる。 $\square$
それでは、応用していきたいと思います。
$a,b,c \in \mathbb{Q}$ に対して、次を示せ: $$a+b+c,ab+bc+ca,abc \in \mathbb{Z} \implies a,b,c \in \mathbb{Z}$$
まずは基本の適用例です。
三次方程式: $$(t-a)(t-b)(t-c) = 0$$ を考える。これを整理すると、 $$t^3 - (a+b+c) t^2 + (ab+bc+ca)t - abc = 0$$ であり、これは整数係数かつモニックなので定理1からその有理根は整数である。 いま、$a,b,c$ はこの方程式の有理数解であるから、$a,b,c$ は整数である。$\square$
$a,b,c \in \mathbb{Q}$ に対して、次を示せ: $$abc+a,abc+b,abc+c \in \mathbb{Z} \implies a,b,c \in \mathbb{Z}$$
$a = \frac{q_a}{p_a}$ などと置いても難しいことがわかります。 できないことはないのでしょうが、少なくとも場合分けが出てきて大変だと思います。 そこで、方程式の有理数解に関する定理を用います。
$S = abc, x = S + a, y = S + b, z = S + c$ とおく。 三次方程式: $$(x-t)(y-t)(z-t)=t$$ を考える。これを整理すると、 $$t^3 - (x+y+z) t^2 + (xy+yz+zx+1)t - xyz = 0$$ であり、これは整数係数かつモニックなので定理1からその有理根は整数である。 いま、$S$ はこの方程式の有理数解であるから、$S$ は整数であり、$a = x - S$ は整数である。 $b,c$ についても同様。 $\square$
$a,b,c \in \mathbb{Q}$ に対して、次を示せ: $$abc,a^2+2bc,b^2+2ca,c^2+2ab \in \mathbb{Z} \implies a,b,c \in \mathbb{Z}$$
$x = a^2+2bc, y = b^2 + 2ca, z = c^2 + 2ab$ とおく。 $x+y+z = (a + b + c)^2 \in \mathbb{Z}$ であり、$a+b+c \in \mathbb{Q}$ であるから、方程式: $$t^2 - (a+b+c)^2 = 0$$ に対して定理1を適用することにより $a+b+c \in \mathbb{Z}$ である。 また、$xy+yz+zx = (ab+bc+ca)^2 + 4(ab+bc+ca) + 2abc(a+b+c)$ であるので、 方程式: $$t^2 + 4t + 2abc(a+b+c) - (xy+yz+zx) = 0$$ に対して定理1を適用することにより、$ab+bc+ca \in \mathbb{Z}$ を得る。 これと問題1より、$a,b,c \in \mathbb{Z}$ を得る。 $\square$