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約数位相の性質

位相空間論 - 演習問題

 標準的な位相空間論の演習問題として、約数位相に関する問題を作りました。 約数位相自体レアだと思うので紹介する意味も兼ねています。

問題1

問題1。約数位相の基本性質

 $n \in \mathbb{N}$ に対して、$U_n = \{m \in \mathbb{N} \mid m$ は $n$ の約数 $\}$ とする。$\mathcal{O}$ を $\{U_n\}_{n\in \mathbb{N}}$ により生成される $\mathbb{N}$ 上の位相とする。このとき、以下の問いに答えよ。

  1. $\{U_n\}_{n\in \mathbb{N}}$ が $\mathcal{O}$ の基底となることを示せ。
  2. $(\mathbb{N},\mathcal{O})$ が連結かどうか調べよ。
  3. $(\mathbb{N},\mathcal{O})$ が $T_0,T_1,T_2$ を満たすかどうかそれぞれ調べよ。
  4. 集合 $A \subseteq \mathbb{N}$ が稠密となるための必要十分条件を求めよ。
  5. $(\mathbb{N},\mathcal{O})$ がコンパクトかどうか調べよ。

 $\mathcal{O}$ は $\{U_n\}_{n\in \mathbb{N}}$ により生成される位相であった。すなわち、$\{U_n\}_(n\in \mathbb{N})$ を含む最小の位相である。 この記事の定理4より、基底であることを示すには、$\displaystyle \bigcup_{n\in \mathbb{N}} U_n = \mathbb{N}$ であることと、 $$\forall U_{n_1},U_{n_2} \in \{U_n\}_{n\in \mathbb{N}}, \exists \ \Lambda \subseteq \mathbb{N} \text{ s.t. } U_{n_1} \cap U_{n_2} = \bigcup_{\lambda \in \Lambda} U_{\lambda}$$ を示せばよい。 後者については $U_n$ の定め方から直ちに従う。 また、前者についても、$U_{n_1} \cap U_{n_2} = U_{\gcd(n_1,n_2)}$ であることから従う。よって、$\{U_n\}_{n \in \mathbb{N}}$ は基底となる。


 任意の $n \in \mathbb{N}$ に対して、$1 \in U_n$ であることと $\{U_n\}_{n \in \mathbb{N}}$ が基底であることを併せれば、任意の開集合 $O$ に対して $1 \in O$ を得る。よって、$(\mathbb{N},\mathcal{O})$ は連結である。


 $(\mathbb{N},\mathcal{O})$ は $T_0$ だが、$T_1,T_2$ ではない。$T_2 \implies T_1 \implies T_0$ なので、$T_0$ なることと $T_1$ でないことを示せばよい。2点 $m_1,m_2$ をとる。 一般性を失わず、$m_1 < m_2$ とする。このとき、$m_1 \in U_{m_1}$ だが、$m_2 < m_1 $ より、$m_2 \nmid m_1$ ゆえ、$m_2 \notin U_{m_1}$ となる。よって、$T_0$ である。 2点 $1,2$ に対して、$2$ を含む開集合は $1$ も含むから、$T_1$ ではない。


 $A$ が稠密であることの定義は、$\bar{A} = \mathbb{N}$ であることである。 $A$ が稠密なとき、任意の $n \in \mathbb{N}$ とその近傍 $N_n$ に対して、$N_n \cap A \not = \emptyset$ が成り立つことと同値である。 すなわち、任意の開集合 $O$ に対して、$O \cap A \not = \emptyset$ が成り立つことと同値である。 よって、$1 \in A$ である。これより、$A$ が稠密ならば $1 \in A$ である。 逆に、$1 \in A$ であるとき、$\bar{\{1\}} \subseteq \bar{A}$ であり、任意の $x \in \mathbb{N}$ について、$x$ の近傍は $1$ を含むから、$\bar{\{1\}} = \mathbb{N}$ である。 よって、$A$ が稠密なることは、$1 \in A$ であることと同値である。


 $(\mathbb{N},\mathcal{O})$ がコンパクトでないことを示す。 $\displaystyle V_n = \bigcup_{m \leq n} U_m = \{x \in \mathbb{N} \mid x \leq n\}$ とする。 このとき、各 $V_n$ は開集合であり、$\{V_n\}_{n \in \mathbb{N}}$ は $\mathbb{N}$ の開被覆である。 $\{V_n\}_{n \in \mathbb{N}}$ の有限部分被覆 $\{V_\lambda\}_{\lambda \in \Lambda}$ をとる。ただし、$\Lambda$ は $\mathbb{N}$ の有限部分集合。 このとき、有限性から $\Lambda$ の最大限 $M$ が存在する。 $M+1 \notin \bigcup_{\lambda \in \Lambda} V_\lambda$ となり、これは $\mathbb{N}$ の有限部分被覆であることに矛盾する。 よって、コンパクトでない。

問題2

問題2。約数位相の自己同型群

 問題1と同様に $(\mathbb{N},\mathcal{O})$ を定める。$(\mathbb{N},\mathcal{O})$ の自己同型全体がなす群を $\text{Aut}(\mathbb{N},\mathcal{O})$ とする。このとき、以下の問いに答えよ。

  1. $f:\mathbb{N} \to \mathbb{N}$ が $\mathcal{O}$ 上で連続となるための必要十分条件を求めよ。
  2. $\text{Aut}(\mathbb{N},\mathcal{O}) \cong \text{Sym}(\mathbb{N})$ を示せ。

 $d \mid x \implies f(d) \mid f(x)$ が $f$ が連続であることの必要十分条件であることを示す。 $\{U_n\}_{n \in \mathbb{N}}$ は基底であったから、それらの逆像が開集合かどうかだけ考慮すれば良い。 \begin{align*} & f \text{ : continuous}\\ & \iff \forall n \in \mathbb{N}, f^{-1}(U_n) \text{ :open} \\ & \iff \forall n \in \mathbb{N}, \{x \in \mathbb{N} \mid f(x) \mid n\} \text{ :open}\\ & \iff \forall n \in \mathbb{N}, \forall x \in \mathbb{N}, f(x) \mid n \implies [\exists m \in \mathbb{N} \text{ s.t. } x \in U_m \subseteq f^{-1}(U_n)] \\ & \iff \forall n \in \mathbb{N} , \forall x \in \mathbb{N}, f(x)\mid n \implies U_x \subseteq f^{-1}(U_n) \\ & \iff \forall n \in \mathbb{N} , \forall x \in \mathbb{N}, f(x)\mid n \implies [d \mid x \implies f(d) \mid n] \\ & \iff \forall n \in \mathbb{N} , \forall x \in \mathbb{N}, f(x)\mid n \land d \mid x \implies f(d) \mid n \\ & \iff \forall x \in \mathbb{N}, d \mid x \implies f(d)\mid f(x)\end{align*}  3行目から4行目の変形は $U_x$ が $x$ を含む最小の開集合であることを用いた。 また、6行目から7行目への右向きの変形は、$n=f(x)$ とすることで得られる。


 (1) での議論から、$f$ が同相写像であることは、$f$ が順序同型であることと同値である。 したがって、$\mathbb{N}$ 上の順序同型全体がなす群を求めればよい。 $f(1) = 1$ であることと、$p$ を素数として、$f(p)$ が再び素数となることがわかる。 また、$\gcd(n,p) = 1$ なる $n$ と素数 $p$ に対して、$f(np) = f(n)f(p)$ であることがわかる。 帰納的に、$f(np^i) = f(n)f(p)^i$ であることがわかる。以上により、$\mathbb{N}$ 上の順序自己同型は素数の全体 $\mathcal{P}$ の置換群と同型である。

ポイント

 「生成される位相」「稠密」といった、用語を忘れていた場合には再度確認しておくとよいと思います。 問題1をとくにあたっては、この記事の定理4と次の命題が重要でした:

命題

 $X$ を位相空間、$A$ を $X$ の部分空間とする。 $x \in \bar{A}$ であることと、任意の $x$ の近傍 $N_x$ に対して、$N_x \cap A \not = \emptyset$ であることは同値である。

 「近傍」を「開近傍」に変えても問題ありません。 この命題は位相空間論を行う上で、呼吸をするように使います。 特に、閉包が絡む議論を行う場合にはまず思い浮かべたい命題です。

 また、約数位相はアレクサンドロフ位相の例になっていました。

定義。アレクサンドロフ位相

 前順序集合 $(X,\preceq)$ において、$U_x = \{y \in X \mid x \preceq y\}$ とする。$\{U_x\}_{x\in X}$ により生成される $X$ の位相をアレクサンドロフ位相という。

 前順序とは、反射律と推移律をみたすような二項関係のことです。約数位相は $(\mathbb{N},\mid)$ に関するアレクサンドロフ位相になっていました。 アレクサンドロフ位相には、次のような特徴があります。

命題

 位相空間 $(X,\mathcal{O})$ について、次は同値である。

  1. $(X,\mathcal{O})$ がアレクサンドロフ位相である
  2. 任意の $x \in X$ に対して、最小の開近傍が存在する
  3. 有限とは限らない集合 $\Lambda$ について、$\displaystyle \bigcap_{\lambda \in \Lambda} O_{\lambda} \in \mathcal{O}$ が成り立つ

(1) ⇒ (2).

 (1)により集合族 \(\{U_x\}_{x\in X}\) は位相 \(\mathcal{O}\) の基底である。任意の \(x\in X\) に対して \(x\in U_x\) である。 任意の開集合 \(O\in\mathcal{O}\) が \(x\) を含むとき、ある集合 \(A\subseteq X\) が存在して \[ O=\bigcup_{a\in A}U_a, \] かつ、\(x\in O\) よりある \(a\in A\) が存在して \(x\in U_a\) となる。すなわち \(a\le x\)。このとき任意の \(y\) に対して \(x\le y\) かつ \(a\le x\) ならば推移性により \(a\le y\) であり、したがって \(U_x\subseteq U_a\subseteq O\) が成り立つ。よって \(U_x\) は \(x\) の最小の開近傍である。従って (2) が成り立つ。

(2) ⇒ (3).

 各点 \(x\) に最小の開近傍 \(V_x\) が存在するとする。任意の開集合族 \(\{O_\lambda\}_{\lambda\in\Lambda}\) を取り、その交わりを \(O=\bigcap_{\lambda\in\Lambda}O_\lambda\) とおく。任意の \(x\in O\) を取れば、各 \(O_\lambda\) は \(x\) を含む開集合であるから、最小性より \(V_x\subseteq O_\lambda\) が任意の \(\lambda\) について成り立つ。従って \(V_x\subseteq O\)。よって \[ O=\bigcup_{x\in O}V_x, \] となり右辺は開集合の和であるから開である。したがって任意の開集合族の交わり \(O\) は開である。よって (3) が成り立つ。

(3) ⇒ (1).

 任意交わりが開であると仮定する。任意の点 \(x\in X\) に対して \[ V_x:=\bigcap\{\,O\in\mathcal{O}\mid x\in O\,\} \] と定めると、仮定より \(V_x\in\mathcal{O}\) である。 \(x\in V_x\) であり、任意の開集合 \(W\) が \(x\) を含むとき定義から \(V_x\subseteq W\) であるから \(V_x\) は \(x\) の最小開近傍である。ここで関係 \(\preceq\) を \[ x\preceq y \quad\Longleftrightarrow\quad y\in V_x \] により定義すると、\(\preceq\) は反射律(\(x\in V_x\))と推移律(もし \(y\in V_x\) かつ \(z\in V_y\) ならば任意の開集合 \(O\) に対して \(x\in O\Rightarrow y\in O\Rightarrow z\in O\) より \(z\in V_x\))を満たすので前順序である。 さらにこのとき各 \(V_x\) はちょうど \[ V_x=\{y\in X\mid x\preceq y\} \] の形になっている。したがって集合族 \(\{V_x\}_{x\in X}\) は前順序 \((X,\preceq)\) による基本的な上集合(upper set)であり、任意の開集合は点ごとの最小開近傍の和として表される(前段の (2)⇒(3) の議論と同様)。従って位相 \(\mathcal{O}\) は前順序から生成される位相であり、(1) が成り立つ。

参考文献

  1. Wikipedia, Alexandrov topology, https://en.wikipedia.org/wiki/Alexandrov_topology, (閲覧日:2026/02/27)
  2. Steen, L. A., & Seebach, J. A. (1978). Counterexamples in Topology (2nd ed.). Springer.